こんにちは。杉です。
「Gallery & Sales」に先月新着した「街へ漕ぎだす」が今週末内覧会になるため、少しだけ掘り下げ情報をお届けします。
今回のプロジェクトは私の御学友であるデザイナー”吉永涼”氏にメインデザインをお願いし、ディスカッションを重ねながら空間を共に作り上げました。
プロデューサーズコメントにもありますが吉永氏は北九州を北側から包む響灘、そして小倉駅から南方向に伸びる北九州モノレールに揺られて本件まで手漕ぎ舟で揺ら揺らと揺られる世界感に想いを馳せたようでした。
北九州に長く住んでいると、ついつい小倉駅へと向かう方向を「街へ出る」と捉えてしまいますが、響灘まで俯瞰して「海を背にゆらゆら揺られる様はまるで街へ漕ぎ出した舟のよう。お家へ入ると今度は自分の心の中へとあてもなく舟を出す」という家路(南方向)へ展開する世界観は私にとって独特で新鮮でした。
またフルオーダーでリビングや洋室に設えたバイカラーのシアーレースカーテンや、Artctuaryとして空間内に点在する作家「佐藤佑」先生の作品色彩もどこか「水」や「ガラス」、「揺らめき」を連想させるものとなっています。具体(部屋から見える街)から抽象(室内・自分の内側)へと気持ちが行き来する曖昧な境界を作る狙いで全ての居室とリビングに絵画を飾っています。
この佐藤佑先生の絵画は「第77回 春の院展入選作品」であり、そこに住まう家族が院展入選作品の原画 100cm × 100cm (紙本彩色)を美術館ではなく自宅で日常的に見られることで、また 墨、胡粉、高知麻紙、岩絵の具といった日本古来の日本画でしか味わうことのできないものが日常にあることで、芸術が日常に近づく環境を作っています。
作品は室内での日常風景と身近な猫であり「日記」というタイトルにあるよう子供から大人まで親しみやすいテーマとなっています。また角部屋で出窓や窓数が多い本邸宅にとって、猫のように窓からの光景をぼんやり眺める光景が想像でき、絵画とリノベーション建築作品との運命的な組み合わせを感じています。
機能面では角部屋で窓数も多いため断熱性能の高い内窓サッシを新設し、光熱費、防犯性や防音性、防結露などに寄与しながら暮らし満足度を高める工夫があります。もちろん浴室暖房乾燥機や食器洗浄乾燥機といった家事を助ける時短設備や光熱費に寄与するLED照明、省エネ型給湯器などを選定しています。イニシャル(導入)コストはかかっても、そこに長く住まわれる方にとって長い目で見たときにメリットが勝る設えは大量生産・大量販売とは真逆の我々の企画販売だからこその特徴です。
施工現場監督のこだわりは一見すると何の変哲もないキッチンカウンター天板にも現れています。もともと既存天板には無垢材が使われていたため良材を活かし、ペーパー掛け、塗装と手仕事で作業してもらいました。
通常では使わない数の11種類のペーパー(60番、80番、180番、240番、320番、400番、600番、800番、1000番、1500番、2000番)という目の粗さが少しずつ異なっていくペーパー掛け、ミリ単位の面取りを施して滑らかな手触りの天板が実現しました。たまたま触って手触りが良かったのが気になって現場で聞いた小話でしたが、ミース・ファンデル・ローエの有名な言葉「God is in the details.(神は細部に宿る)」のストーリーを少しだけ思い出した瞬間でした。
長くなりましたが作り手、作家、それぞれの想いが詰まっている本建築作品。
もちろん長年不動産販売業を営むOLDGEARの不動産鑑識眼のフィルターを通していますので、エリア性や角部屋といった不動産そのものが持つ資産性もお墨付きです。
あまり良いことばかり書きすぎると怪しくなるのでこのへんにしておきます。効率重視の規格生産されたものとは対極にある、想いの詰まった豊かさを週末現地でご体感ください。