こんにちは。杉です。
先日ホームページ内「Gallery & Sales」に新着した「凝」について担当プロデューサーとして少し話を深堀りします。
今回のタイトル「凝」。
“こる”と読むか“ぎょう”と読むか読み手に委ねるタイトルに敢えてしています。
建築作品自体が“夢想”や“心の問答”に触れるコンセプトとしているためで、固定観念を持たずに「何だろなー」のライトな気持ちで見ていただき、感じたままに心に留めていただきたいからです。
プロデューサーコメントにも記載している通り、本邸宅を初めて訪れた際はL型に大きく広がる開口面から入る光、そしてバルコニーから240°広がる眺望に心を奪われました。
また13階というマンション高層だからこそ見渡せる鳥瞰の光景は、自分自身が何か羽ばたいているような気持ちにさせられました。
室内から見える山々や、眼下の志井川沿いに咲く桜並木を見ていると、「これまでの歴史の中で何度新緑や桜の季節を迎えたのだろう」とか「太古の時代には鬱蒼と繁るシダ植物や群生林の上を雄大に羽ばたく始祖鳥がいたのかなぁ」と想像させられました。
そんな想いから画家 山田雄貴先生の絵画 第76回春の院展入選作品 日本画『太古の鳥』という素晴らしい作品とコラボレーションさせていただくこととなり、贅沢にも原画 (100cm × 100cm 楮紙・岩絵具)が床の間に飾られています。
山田先生のコメントにある「生き物の化石は、魅力ある抽象的な形で、自然が作り出した造形に感動」というものを敢えて狭小空間で感じていただくために、そしてリビングとを隔てる躙口のような特徴的な建具で敢えて不便さを作り「儀式」を挟むことでリビングという日常と特別に想いに浸る部屋、そして開放的なバルコニーという3空間を行き来できるようにプランニングしました。
「志井」の地で「孤高」の妄想に浸ることができるという願いを込めて「志高の間」というネーミングなのですが、この狭小空間だからこそのモノづくりに携わった職人や作家が手仕事で凝った志の高さも兼ね備えています。
4畳にも満たない特別室を構成する無垢材は棟梁が自ら材木店の社長とディスカッションを重ねて銘木を選定し、二股の高野槙や、文机には耳付きのサペリ。床框や落とし掛け、床材にも楠やオークといった良材が散りばめられています。
また山田先生の絵画に使われている岩絵具のような世界観を室内全体で再現したかったので、高層階特有の内装制限(燃えにくい材料で壁や天井は作りなさい という建築基準法上の決まり)をクリアしながらも高い意匠性を持つ斑(ムラ)を売りにした室内塗材を選定しました。左官職人の手仕事ならではの質感です。
部屋の入り口にあるプレートと建具の引手も世界に一つのオリジナル品。
漆芸作家 時田早苗先生が特別制作した唯一無二の一品です。
この一室で客人を迎えたり自身の創作活動や創造空間として利用されることも想定してディテールにも気を配っています。
現地でぜひ目を凝らして見てもらいたいのは、時田先生の代表技法でもある卵殻張り、螺鈿、蒔絵といった伝統技法や、真鍮 漆 卵殻 アワビ貝 銀といった良材がプレートや引手というわずかな面積でも惜しみなく繰り広げられていることです
時田先生のコメントにもあるとおり卵殻と相性の良い銀の経年変化や棟梁が手仕事で作り上げた無垢材の経年変化、そして家族の変化や時の移ろい、周辺環境の四季の変化などをこの空間で楽しみながら感じていただければと思います。
前回ブログでもお伝えしましたが、我々OLDGEARの各プロデューサーがこだわり抜いて作った建築作品は世界に一点だけの大量生産とは真反対の超絶非効率なプロセスで出来た至極の一邸です。
効率重視の規格生産されたものとは対極にある豊かさを、現地現物でご体感ください。